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素晴らしい葬儀と最近の傾向

 昨日、師僧の自坊で葬儀の役僧を依頼されました。故Gさんは信行会の会長を務められるなど、寺門興隆に絶大な貢献をなさった方で、いつ訪ねても必ずお寺にいらっしゃいました。人柄も明るく、心から菩提寺を愛しておいででした。拙僧も出家得度以来大変お世話になり、報恩も込めて全身全霊で霊山往詣を祈念いたしました。

 当日は親族関係者はじめ、信行会員が総出で参列、出棺時は勇壮な団扇太鼓の音色、皆で声浪々とお題目をお唱えしました。喪主の息子様の挨拶で「頑固な父でしたので、よく衝突することもありましたが、今日、皆様の温かな御心に触れて、父の家族では感じ得ない部分を評価していただいたことを認識し、感謝の気持ちで一杯です。」と仰いました。なくなったお父様が心の中に蘇った瞬間ですね。葬儀ってやはり必要だと思います。
 
 太鼓を叩きながらふと思った。十数年前の華やかな落慶法要、笑顔に満ちた檀家さん。副住職が荒行から帰山した際の誇らしい瞬間。そして今回の葬儀と、お寺って一つの空間で色々な相があるけれど、人生の卒業式を愛すべき我が寺で厳修できた故Gさんも生きた関係者も皆笑っているかのように見えました。
 
 最近は直葬と言った便利な言葉がありますね。そのような言葉を誰が考案したのか?ペットが亡くなり供養する人が増えていますが、動物の直葬が減り、人の直葬が増える。変な世の中になりました。

 皆様はその言葉に救われているのでしょうか、惑わされているのでしょうか。現代日本人は瞬間に囚われ、ただ生きているだけの者が多いのか、誕生日や結婚式、成人式は派手にしても、葬式はしない。他者からの恩を消費だけして報ずることをしない。自分本意に生き、自分の為だけに物質を消費する。遺族はサラッと「直葬しましたが四十九日はしたい」と言う。形だけで心が伴わない儀式などそれこそ無意味。
 
 ある方は「成仏するためには四十九日をしてやらないといけないと聞いた」という。なら、どうして葬儀してやれなかったの?曰く「時間と費用を節約した。最近はみんな直葬が増えているらしいから」と。現代人はけっこう霊やお化けを気にするしスピリチュアルだのパワースポットだの言いますが、ここで故人が化けて出ることは考えなかったのかな?
 
 人として心を養う機会が葬儀や供養なのだと思います。そして、自他共に仏道を成ずると言うように、皆の真摯な祈念が故人の魂を宗教的救済世界に安住させ浄化成仏するのです。煩悩に惑わされ、執着心を残し、顛倒する衆生の魂は、未浄化の風になるか、輪廻の渦に呑み込まれてしまう。

 故Gさんは千の風にならずに霊山浄土に安住したことでしょう。そして我々をお見守りくださるでしょう。
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